りんご畑の歴史を高接から感じる

絶対「ふじ」じゃないひと

「高接(たかつぎ)に気づかず、同じ木に全然別の品種が成る問題」が、りんご畑ではけっこう発生しがちです。「高接」とは、りんごの栽培でよく使われる手法のひとつで、かなり手軽に、増やしたい品種を増やすことができます。

ただ、畑で見つけると、「あーもう。なんで高徳に千雪が継いであるの。わけわからなくなるからまじでやめてほしい。」と、ついぶつくさ言ってしまいます。他にも、アンビシャスにシナノゴールドが継いであったり、つがるに恋空が継いであったりしました。本当に訳がわかりません。

以前までは、なんの木になんの品種がなるのかが分からなくなり混乱するので、わりとその光景にネガティブな印象を受けていたのですが、今回は少し違う気持ちでそれを受け止めることができました。

絶対「ふじ」じゃないひと

「ふじ」の摘果をしていた時に見つけた、明らかにふじではない品種。おしりはゴツゴツしているし、色が少し赤くなり始めている。他の「ふじ」はまだまだ緑色なのに、この時期に赤くなるなんておかしい。

なんの品種なのか、確信が持てなかったのでTwitterのりんごオタクの皆さまへ呼びかけました。

30分もしないうちに、「おしりごつごつ」「9月上旬で少し赤みがかる」くらいの情報で「スターキングデリシャス」ではないかというお声をいただきました。皆さま流石です。

「ふじ」が人気になってきた頃、それまで主要品種だった「スターキングデリシャス」の枝を切り、「ふじ」に切り替える農家が多かったそうです。この畑もそのあおり受けたんだなぁ。そう感じました。

「ふじ」たち

このりんご畑を引き継ぐ際、畑の歴史を知る人が全くいませんでした。

前の持ち主の方も、「畑は大変だから、別の仕事につきなさい。」と言われて育てられたということで、畑のことはノータッチでした。持ち主ではあるものの、ノータッチのまま、借りてくれる農家がいれば貸し、その農家が畑をやめれば次の借り手を探し、見つかれば貸し、というサイクルだったようです。

「スターキングデリシャス」の枝

ネガティブに感じていた高接も、歴史を感じることができるという点でちょっとワクワクな存在に変わりました。せっかく出てきた「スターキングデリシャス」を、大事に育てていきたいと思います。

Writer:永井温子(株式会社Ridun代表取締役)

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