【Introduction】
「ナンニモシナイ」をめぐり、色々な人たちのもとを訪れて話を伺う、『失われたナンニモシナイを求めて。』というこの企画。2回目は、青森県弘前市石川にある「津軽あかつきの会」を訪れ、会長の工藤良子さんのお話を伺いました。
【目次】
まえがき(2023/8/14)第1話(2023/8/15)第2話(2023/8/16)第3話(2023/8/17)第4話(2023/8/18)第5話(2023/8/19)第6話(2023/8/20)第7話(2023/8/21)第8話(2023/8/22)第9話(2023/8/23)第10話(2023/8/24)第11話(2023/8/25)第12話(2023/8/26)第13話(2023/8/27)第14話(2023/8/28)第15話(2023/8/29)第16話(2023/8/30)第17話(2023/8/31)第18話(2023/9/1)第19話(2023/9/2)第20話(2023/9/3)第21話(2023/9/4)あとがき(2023/9/5)
2023年3月22日
【登場人物】
〈たずねた人たち〉アツシ(高橋厚史)シャッチョ(永井温子)シオリちゃん
〈こたえてくれた人〉リョウコさん(津軽あかつきの会 工藤良子さん)
アツシ 良子さんが結核でこう、閉じ込められてた状況って、今のコロナとかで、なんだろう、まあ、もっとこうなんですかね。やっぱり…。 良子さんの当時の状況よりは、もっとそんな閉じ込められてるっていう感じは少ないとは思うんですけど。でも、家の中に、いなきゃいけない、うつるから、っていうか、その 、うつしてしまううつるかもしれないから、みたいに、目に見えないものを、怖がる、みたいな。 そういう期間、というかそういう時間だったのかなって、その、コロナ禍っていうのは。
リョウコさん うんうん。
アツシ でも…。なんなんすかね…。
リョウコさん 今だったら病院に入院させるとかあんだけどもそういう、もっとまだまだ貧乏な時代で、そういうこともなくて、もう。で、 私は父親がないから母と祖母も外に出て働いてあったし、 まったく、ひとりなんだよな。誰もいなくても、妹たちも「近づくな」って言われてるし。 そういう状態でずーっといて、何してるかってば、どんでも活字のあるものを探して、あの、りんごの袋かけるでしょ?
アツシ はい。
リョウコさん あの、新聞紙で作った。あれをこう広げて、あれ。あれ読んでるのは記憶にあるの(笑)なんも読むものなくて。 今でも活字好きなんだよな。困ってしまう。
アツシ そっか、昔は袋って。
シャッチョ そうそう、新聞紙使って。
アツシ そっか新聞紙だったんですね。
リョウコさん 袋かけ、今は新聞紙でないでしょ?
シャッチョ ではないですね。
リョウコさん 昔は新聞紙をこう、切って。袋は買ってくるんだけど。ちゃんと、工場でやった袋で、新聞紙持ってけばそれ作ってよこすんだよね。それ自分の家であのかねっこ、すみっこにこう、かねっこ入れるのは自分たちで入れて。
一同 へぇぇぇ。
リョウコさん それを使って。その紙、あの、リンゴを大きくなったら袋外しっていって外すでしょ。それをまた家さ持って帰って、再利用するんだよね。最後までもうちゃんと、焚き付けにしたり、トイレに使ったり。無駄にしないっていうのか、その、こう…。袋外して、こうなったその新聞紙をこう(笑)
アツシ 広げて(笑)
リョウコさん そう広げて(笑)
アツシ 読んでたんですねぇ…。
リョウコさん そういうのすごく記憶にあるの。
アツシ 本当にじゃあ、活字に…。
リョウコさん そういう時代だったんだよな。ほんとにもう貧乏な、終戦後、十年ぐらいはもう、ほんとに…。 ちょうど、終戦後のその頃だもんな。昭和二十年に戦争終わって、二十一年に小学校一年生に入ってる。ちょうど、戦後の混乱期。
アツシ 小学校…。小学校二、三年生の時にその、結核になって…。治ったんですか?
リョウコさん 治った…んだべね。
アツシ へぇ…。
リョウコさん あの、一ヶ月…。一週間でない、一ヶ月に一回だべか、保健婦さん、この辺をまわって歩く保健婦さんが注射してくれるんですよ。一ヶ月でない一週間一回だったかの…。その、おっきい太い注射器持ってきて。それがたった一つの治療で。病院に行くとかもないし。 で、治ったんで、学校に行かせてもらったんだけど、運動会とかは一切参加せばダメってことで。もう、いっつもテントの下で記録係とかそういうのやって。走ればダメとか、 大きい声出せばダメとかね。完全に治ってないんだべかの、どんだかちょっとその辺わかんないけども、ずっとそういう状態で。 小学校の間はもう…。運動会遠足は参加なしで。
アツシ うんうん。
リョウコさん それでも今まで生きるんだもんな、本当に、不思議だよの。
アツシ いやぁ、不思議ですねぇ…。
***
第3話「それでどうなるかっていうかそこまではわからないです。」に続きます。