doshin_3

【Introduction】

「ナンニモシナイ」をめぐり、色々な人たちのもとを訪れて話を伺う、『失われたナンニモシナイを求めて。』というこの企画。2回目は、青森県弘前市石川にある「津軽あかつきの会」を訪れ、会長の工藤良子さんのお話を伺いました。

【目次】

まえがき(2023/8/14)
第1話(2023/8/15)
第2話(2023/8/16)
第3話(2023/8/17)
第4話(2023/8/18)
第5話(2023/8/19)
第6話(2023/8/20)
第7話(2023/8/21)
第8話(2023/8/22)
第9話(2023/8/23)
第10話(2023/8/24)
第11話(2023/8/25)
第12話(2023/8/26)
第13話(2023/8/27)
第14話(2023/8/28)
第15話(2023/8/29)
第16話(2023/8/30)
第17話(2023/8/31)
第18話(2023/9/1)
第19話(2023/9/2)
第20話(2023/9/3)
第21話(2023/9/4)
あとがき(2023/9/5)

2023年3月22日

【登場人物】

〈たずねた人たち〉
アツシ(高橋厚史)
シャッチョ(永井温子)
シオリちゃん

〈こたえてくれた人〉
リョウコさん
(津軽あかつきの会 工藤良子さん)

【第3話】

それでどうなるかっていうかそこまではわからないです。

リョウコさん
 「ナンニモシナイ」っていうの、いいよの。

アツシ
 いいですか。

リョウコさん
 でも、難しいの。

アツシ
 うん、そうなんです。

リョウコさん
 たえずこう、あれやってこれやってとかってこう頭は動いてるでしょ?  体動かなくても。

アツシ 
 動いてます、うん、そう。

リョウコさん
 せば、本当の意味の「ナンニモシナイ」でないよね。

アツシ
 そうなんですよね(笑)

リョウコさん
 頭も空っぽにならないと(笑)

アツシ
 たぶん…。うん、そうなんすよね、「ナンニモシナイ」って聞くと、やっぱこう「頭まで 空っぽに」って思っちゃうんすよね。うん、それすごい難しくて。

リョウコさん
 うん、難しいよの。

アツシ
 空ぼーっと眺めてても、多分ぼーっと眺めてるから、頭でこう色々ああでもないこうでもない、「あいつなに言ってんの」みたいな感じでなんかイライラしてきたりとか(笑)

一同
(笑)

リョウコさん
 お寺で坐禅組むのともまた違うんだべね。


アツシ
 うん、そうですねぇ…。


リョウコさん
 でも、空(くう)…。もうな、空っぽにしないばダメだって…。言うけど、難しいの。


アツシ 
 そう、だから…。
 お坊さん、その前回お話聞いたお坊さんに「ナンニモシナイってなんですかね」って伺って。その方が直接言ってたわけじゃないんすけど、僕が受け取ったものとして、まあ…。
 社会、社会っていうところで流れてる、時間とは、違う。そういう時間軸を持つっていうか。その方おっしゃってたのはそういう、こう、なんですかね。


リョウコさん
 うん。


アツシ
 一日一日をなんとかこう生活していかないといけない、お金をなんとか得て、家族を養ったりとか、生活を続けていかないといけないっていう、ところとは別に、青森の場合であれば、縄文時代から流れてる、もっと太いっていうんですかね。見えない、見えないけど、、すごい太い時間軸がある。
 だから、この前聞いた石川地区の歴史って言うんですか。


リョウコさん
 うんうん。


アツシ
 ここらへんでは昔むかし、天皇家についた側と幕府についた側の争いがあってとか。その前にもなんかこう、山伏、とかの流れがあったりとかっていう、そういう、なんですかね。とても、見えない、大きい時間の軸っていうんですか、その、二つを持つといいんじゃないかっていうお話をされてたんです。


リョウコさん
 うん。


アツシ
 だからその…。
 あかつきの会でしている料理の伝承っていうところも、 僕、勝手に考えて楽しくなってるんですけど、今、良子さんたちが書き残しているレシピって、もしかしたら、百年、二百年、三百年とか 、遡れたりするんじゃないかなってことをこう、考えてひとりで楽しくなってるんですよね。


リョウコさん
 そういうのもあるんじゃないかと思う。
 要するに、ここの土地で取れたものを食べれるように作るんだから、その頃から、あるものはやっぱり、食べたと思うね。その、作り方は、そんなに変わらないものもあると思う、ちゃんとした文献もないし、わからないけども。


アツシ
 口伝えですもんね。


リョウコさん
 んなんだよね。今もだから野菜でもどんどん新しい野菜で、改良されて新しいもの出てきてるし、カタカナの覚えられないような名前の野菜も出てきてるけども。ここではなるべくそういうのを使わないで、昔のまんまのそういう野菜で、やれる分やって。もう、その料理法も昔のまんまって、やって。


アツシ
 うんうん。


リョウコさん
 郷土料理っていうね、そういうこう料理が変化していくのは、誰でもみんなやってるし、新しい野菜を取り入れて作るのは簡単、なんだよな。でもその、本当のその古いままを残したいと思えば、 その辺きちっと芯が通ってないば、もうすぐ、崩れてしまう。
 調味料も新しい調味料どんどん出てきて、手軽だしな。しょっとやってこうしゃしゃって混ぜればできるようなものって。


アツシ
 そうですね。


リョウコさん
 それ使ってしまえば、崩れる、と思うんだいな。やっぱりこうきちっとどっかで線を引いてやらないと。
 それ、今の人たちそれ一応今のとこ守ってくれてるし、言えばついてきてくれてるはんで、ありがたいんだけど。


アツシ
 うんうん。


リョウコさん
 だから「それやったってどうだ」って、その「昔のものやったってどうだ」って言われれば…。
 うん、まあ、どうって言うことないな、なんでもある時代だからそれなんでも食べていいんだし、それはそれでいいけど、やっぱりこう。
 ずっと繋がってきたものをきちっとこう、どっかで、そんなに大きくこう広げなくてもいいから、ちょっとこう細々とでもいいし、好きな人だけでもいいから、それをこう、きちっと残したいっていう気持ちはある。


アツシ
 なんかこう、特別な目的とかあるわけではないですもんね?


リョウコさん
 えぇ、ないです。


アツシ 
 ないですよね。ただこう、連面と続いてきた、ものを…。
 たぶん残したいっていうところでもないですよね、きっと。


リョウコさん
 うん、うん。


アツシ
 ただ自分たちの…。なんていうんですかね…。


リョウコさん
 それこそ南部の話でないけども、ここの地域に伝わってきたものだから、やっぱりこうどっかで残して繋げていきたいっていう思い。


アツシ
 うんうんうんうん。


リョウコさん 
それでどうなるかっていうかそこまではわからないです。
 例えば、おたく達の祝言の事業だってそうでしょ?
 昔の祝言のしきたりで「やったはんでってどうなるんだ」って。「何事もない、今は今風にやればいい」って。それはそれでいいんだけども、なんていうんだかこう家から家に、繋がっていくっていう、地域の人がみんな集まって準備したり手伝ったりそういう、あったかみっていうのかな。
 それ、どうにかこう残せればいいと思って。


アツシ
 うんうん。


リョウコさん
 やった結果、どのくらい残ったかなんだかわかんないけど、だから、人もいっぱい集めて、 昔はそうやったんだいね。あそこの家で祝言やるって「おめも来いおめも来い」ってみんな呼んでみんなでそうしてやったっていう。 そういう雰囲気をちょっと出したくて。
 で、やっぱりこうやってみれば、やっぱり家と家との、まあ、本人同士が一番なんだけども。そういうあったかみ、これからそうしてやっていくんだって、ここの家の跡を継いで、 そしてやっていくんだっていうその覚悟させ、お嫁さんに覚悟させるっていうのかの(笑)


一同 
 へぇぇ…。


リョウコさん
 そういうのはちょっとこう。今は、ないでしょ?


シャッチョ
 んー…。


アツシ
 覚悟か…。

***

PAGE TOP