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【Introduction】

「ナンニモシナイ」をめぐり、色々な人たちのもとを訪れて話を伺う、『失われたナンニモシナイを求めて。』というこの企画。2回目は、青森県弘前市石川にある「津軽あかつきの会」を訪れ、会長の工藤良子さんのお話を伺いました。

【目次】

まえがき(2023/8/14)
第1話(2023/8/15)
第2話(2023/8/16)
第3話(2023/8/17)
第4話(2023/8/18)
第5話(2023/8/19)
第6話(2023/8/20)
第7話(2023/8/21)
第8話(2023/8/22)
第9話(2023/8/23)
第10話(2023/8/24)
第11話(2023/8/25)
第12話(2023/8/26)
第13話(2023/8/27)
第14話(2023/8/28)
第15話(2023/8/29)
第16話(2023/8/30)
第17話(2023/8/31)
第18話(2023/9/1)
第19話(2023/9/2)
第20話(2023/9/3)
第21話(2023/9/4)
あとがき(2023/9/5)

2023年3月22日

【登場人物】

〈たずねた人たち〉
アツシ(高橋厚史)
シャッチョ(永井温子)
シオリちゃん

〈こたえてくれた人〉
リョウコさん
(津軽あかつきの会 工藤良子さん)

【第5話】

その古いのは、例えばけの汁でも十人分とか。

リョウコさん
 あの、このレシピ本作った頃は一番体調悪くて。
 前書きもなんも書けなくて、ほとんど編集の人が書いてくれて。
 でも、書いてもらったもの、こう見て、「あ、この人ここまでこの会を理解してらったんだぁ」と思って、びっくりした部分あったよね。

 

シャッチョ
 みんなで「これ良子さんが話してる言葉遣いだし、もう目の前で話してそうで、すごいね」って話してたんですよね。

 

リョウコさん
 「いつも来てもこう話してるのをみんなこう聞いてくれてるんだ。えー、ここまでわかってくれてったんだ」と思ってますますこう、信頼よせて。

 

アツシ
 本当にあのレシピ本の前書きというか、文章、すごいよかったです。

 

リョウコさん
 書いてくれたの(笑)
 今だったらちょっと書けるような感じするたけど、あの頃はもうなんもできなくて…。

 

アツシ
 うんうん。

 

リョウコさん
 でもこの前取材に来た人いたでしょ?

 

シャッチョ
 いらっしゃってましたね。

 

リョウコさん
 すごい編集者だの。話、質問がさ、的を射てて。 あのレシピ本のこと、「これは優秀な編集者が入った本だ」って、すごいっきゃの。
 で、その前に作った古い私たちのあのレシピ本。「これが私は好きだ、あったかみがある」って。あ、すごい人だと思って。
 自分たちもそう思ってるの。

 

シャッチョ
 あぁー。

 

リョウコさん
 だけども。あれはあれでな、せっかくあの、ああして作ってくれたし、売れてるし、なんぼかは収入になるし、ありがたいんだけども、やっぱりそういう見方する人もあって。

 

アツシ
 うーん、いやぁ、嬉しいっすよね。

 

リョウコさん
 そう。その古いのは、例えばけの汁でも十人分とか。

 

シャッチョ
 ふふふ。

 

リョウコさん
 漬物とかも五十人分とか(笑)

 

シャッチョ
 ひとたる、みたいな(笑)

 

リョウコさん 
 それは、言われたの。あの、作る人にも「ふつう料理本って言えば、四人分とかそういう風に直せばどんだ?」って。
 「ダメ、四人分作ってもおいしぐね、十人分作ってこそ、その味だはんでこのままで行く」って言って、私ももう頑固だどこで。
 そのままでいったんだけど、この前来た取材の人は「それがいいんだ」って。初めて。あの、あの方がいいって言われた。
 「これはあったかみがあっていい本だ」って。

 

シャッチョ
 うんうん。

 

リョウコさん
 「こっちがダメっていうんではないけど、これはあのプロの優秀な編集者が入った本だ」って言ったのよ。

 

アツシ
 あぁー。

 

リョウコさん
 見る人が見ればわかるんだの。

 

アツシ
 その本、一番最初の本って何年前に…。

 

リョウコさん 
 平成十八年、でないかな。
 その時は、そろそろこうレシピが溜まってきた頃で。

 

アツシ
 はい。

 

リョウコさん
 「あ、こりゃただこうして口でしゃべったりして、こうみんな年いけば忘れるな」と思って本に残したいと思って、 それでそのレシピ本作って。あれは、補助金かなんかもらって、作ったんだよね。

 

アツシ
 うんうんうん。

 

リョウコさん
 それであの、「こういう本はないもんだ」って、散々言われて(笑)
 でも、田舎のこういう料理はこういうのだはんで、味が出て、漬け物だって、たくあんは二、三本でだれも漬ける人ないし、だから、このままで行くって考えて。

 

シャッチョ
 あれ、良子さんって、二代目になるんですか?

 

リョウコさん
 ええ、そうなのさ。この初代の人は、サンフェスタ石川で、ずっと私がリーダーで、この人副リーダーで手伝ってくれた人なのさ。

 

シャッチョ
 へぇー!

 

リョウコさん 
 それでその人が辞めたついでに、 せばあかつきやるってした時、「せばあんたが今度あの会長だ」って、「私が補助するはんで」って頼んで。何年、何年だったべな。二、三年、そうしてやって。
 ここが私の文章です、この後書き。

 

シャッチョ
 厚史くん見たことあった?

 

アツシ
 いや初めて…。

 

シャッチョ
 ほんと? うちにあった気がする。

 

アツシ
 うんうん。

 

シャッチョ
 「ひとたる」は面白いなぁ…。

 

アツシ
 「干し大根一キロ」(笑)
 いいっすね。

 

リョウコさん
 「こういう料理本を作る人いないよ」ってなんぼしゃべられだもんだか(笑)

 

シャッチョ
 二〇〇六年って一番最初に書いてある。

 

アツシ
 うん。平成十八年、二〇〇六年。うん。

 

シャッチョ 
 二〇〇六年なにしてたっけ…。中学生か。

 

アツシ
 そうだね。

 

シオリちゃん
 けっこういっぱいレシピあるんですね。

 

リョウコさん
 まあ普段食べてるものざっとまとめただけでもやっぱりそのくらいあるんだいね。

 

アツシ
 季節に、春、夏、秋、冬って、季節がこう、根っこにあって、料理が出てくるんですね。

 

リョウコさん
 やっぱりここのもの、取れるものを使うっていうのが一番の、根本だから。
 そうすればやっぱりの、季節に、今ももうちょっとせば山菜の時期になって。山菜食べてるうちに、野菜もぽつぼつできてくるし。 秋になれば根菜類、キノコとかの。
 まあ、うまくできてるもんだと思うよな。

 

シャッチョ
 畑にも今バッケがすごい出てきて。日当たりいいところはもう開いちゃってるよね。

 

アツシ
 ね。

 

シャッチョ
 早いなと思って、今年本当に。

 

リョウコさん
 雪あるうちからの、こうちょっと日当たるとこが出てくるもんな。あれが一番早く食べる山菜。
 ちょっと苦みあるでしょ、あの苦みが冬の間に根菜類食べればいくらかこう、根菜に含まれてるその、悪いものが溜まってるのを、春のちょっと苦みあるものを食べることでみんな流してくれるだって。

 

一同
 へぇー!

 

リョウコさん 
 だから、春の山菜って少し苦味あるものが多いよの。
 うまーくできてるもんだと思うな、本当に。

 

アツシ
 すごいですね…。あーそっか…。
 僕とかもう、野菜っていいもんだって頭しかないんで、食べすぎれば良くないみたいな考えもあんまりないんですよね。でも、 根菜とかずっと食べてれば色々溜まるから、春になれば、そういう山菜とかを食べて流すっていう。

 

リョウコさん
 今はだって、冬でもなんでもいつでもあるでしょ?

 

アツシ
 あります。

 

リョウコさん 
 昔は、保存しておいたものしか食べないっていえば結局、根菜が中心になって、 あとは漬けといた白菜でもキャベツでもそういうもの食べて、春まで、持たせるから、やっぱりこう、体の中にそういうのたまるんだよの。
 だから、春のものを食べればそれがみんな流れ出て。野菜できてくれば、夏のキュウリでもナスでも、そういうの食べれば、暑いのに耐えられる体ができる。
 んで、それ過ぎれば今度、冬に備えて、その根菜類とか。体あっためるものがかぼちゃとかでもな、そういうの取れてくるから、それ食べれば、体あったまって、冬をこう、丈夫に過ごせるっていうちゃんとこう、季節のそれがあるって言うんだけど。
 今なんも季節感なくて年中いつでもなんでもあるしの。

 

アツシ 
 そうですよね…。季節感ないよなぁ。
 あの、リョウコさんにとって、冬って、どういう季節ですか?

 

リョウコさん 
 あ、昔は大好きでした。この頃寒くてもうストーブから離れたくなくてあれだけども。
 やっぱり私も畑やりながら、 それこそあの、用がありすぎるんだよね、夏はね、忙しいでしょ、やることいっぱいで。

 

アツシ
 そうですね。

 

リョウコさん 
 んでやらねばいいんだけど、好奇心の塊だから、新しい野菜でも花でも出てくれば、「みんなやってみたい」って、自分で用を作って忙しい思いして。
 雪降ればやっと諦めて(笑)

 

一同
(笑)

 

リョウコさん
 自分の時間が持てると思って。
 こうなんて言うんだか、三月まではもうゆっくりできると思ってな。
 重ねて置いた本でも読むと思えば読めるし、好きなもの、手芸でもなんでもやろうと思えばできるし。夏の間はとてもな。
 だから、 ゆっくりできる時間っていうのか…。

 

アツシ
 冬が…。

 

リョウコさん
 好きでした。

 

アツシ 
 そうですよね、夏すごい動いて、冬、雪積もれば、なんもできない。
 できないっすよね。

***

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