【Introduction】
「ナンニモシナイ」をめぐり、色々な人たちのもとを訪れて話を伺う、『失われたナンニモシナイを求めて。』というこの企画。2回目は、青森県弘前市石川にある「津軽あかつきの会」を訪れ、会長の工藤良子さんのお話を伺いました。
【目次】
まえがき(2023/8/14)第1話(2023/8/15)第2話(2023/8/16)第3話(2023/8/17)第4話(2023/8/18)第5話(2023/8/19)第6話(2023/8/20)第7話(2023/8/21)第8話(2023/8/22)第9話(2023/8/23)第10話(2023/8/24)第11話(2023/8/25)第12話(2023/8/26)第13話(2023/8/27)第14話(2023/8/28)第15話(2023/8/29)第16話(2023/8/30)第17話(2023/8/31)第18話(2023/9/1)第19話(2023/9/2)第20話(2023/9/3)第21話(2023/9/4)あとがき(2023/9/5)
2023年3月22日
【登場人物】
〈たずねた人たち〉アツシ(高橋厚史)シャッチョ(永井温子)シオリちゃん
〈こたえてくれた人〉リョウコさん(津軽あかつきの会 工藤良子さん)
リョウコさん 家見つかって、ここに根っこ生やせればいいね。シャッチョ そうなんですよねぇ。リョウコさん なかなかこう…。シャッチョ 石川でなかなか…。リョウコさん んだっきゃ。農家の家とか、貸してくれれば、一番いいと思っての。あまりこう、あの、ごちゃごちゃするとこさ行っても…。 結局、いずれ機械とかこう、畑やるとすれば、箱もなんでもいっぱいあるっきゃな。だから、そういうのちゃんとできるような広い場所でなきゃ。シャッチョ そうなんですよね。でもなかなか見つからなくて…。リョウコさん まぁ、そのうちに。ひょっと空くと思うんだけど…。シャッチョ 畑のこととか色々聞きたいなと思って、前の園主さんにも、家の歴史とか含めて。リョウコさん あそこも古いよの、ほんとうの農家の古い家だからやっぱり。あると思う。シャッチョ 聞きたいですって前言ったら「そういうのべつにいいね」って言われて(笑) じゃあ、ちょっと聞きに行けないなみたいな。 本当は知っておきたかったんですけど、畑を継がせてもらったし、なんかそこを置き去りにするの嫌だなと思ったんですけど、本人が言いたくないなら聞けないな、みたいな。リョウコさん 男の人だはんでの。シャッチョ うーん、なんでなんですかね、不思議。 なんでなんですか?(笑)アツシ いやぁ、ね、不思議(笑)シャッチョ 男の人だからなのかな。そういうのあるのかな。リョウコさん 男の人でも、しゃべる人はしゃべるけども…。シャッチョ しゃべんない人の方が多いイメージはある…。アツシ あの、この前の歴史の、石川のお話聞いた時に、合併の時の一悶着の話で、最後の最後に、小学校とかに通ってる子供たちが、ね。忍びないから。婦人会の方々が動いて、 弘前市に合併するっていう流れになったっていうのを聞いて。 いや、なんか男ってそういう、なんですかね。 あの…。歴史っていうか、その土地の伝統であったりにプライド、プライドっていうか誇り?リョウコさん うん、んだ、そうだもんな。アツシ ずっと自分たちは南部の流れを汲んで、生きてる、んだっていう。それってこう、口伝えで伝わってきて。一つの、物語みたいなものの中をこう、生きてる、男の人たちは。 なんかそこを、よりどころにして、生きていたのかな。生きているのかなって思って。 でも、女の方ってそこ、あれですよね。結構シビアにというか。リョウコさん やっぱりよそから来てる人たちだから、女の人たちは。アツシ あぁー。リョウコさん あの、男の人はそこに生まれた人たちだから。お嫁さんに来た人はな、やっぱりよそから来てるから融通効くっていうのかな。アツシ あぁなるほどなるほど。リョウコさん なんも、一悶着とかそういうもんでなかったの、すごかったの、とにかく。 その合併の頃は。各村にその合併反対派と、賛成派があってもう、そこの人とは口も聞かない状態が続いて。一同 へぇぇぇ。リョウコさん 晩になれば集まって、反対派は反対派で、こっちはこっちで集まって、色々こうな、そういう「どういう運動すればいいか」とか。アツシ 練りに練って。リョウコさん 最終的に分市問題になって。あの、八町会あったうちの三つが大鰐の方に行ったんだよね。で、あとみんな弘前市で。その三つは「なんで弘前市の下になんねばまねんだ」ってことで抵抗して。 結局は、子供たちもだからその、分市した方の人は大鰐に行ったの。ここさ来てる人でも、その頃、小学校三年生四年生頃まで石川の学校さ行って、その後大鰐に行った人たちは、その反対派の人たちで。 すごかったの、今でも語りぐさで(笑) なんもわたしらだって口もしゃべられなかったもの。そんなこんなでおっかなくて。もう男の人たちがもう、真剣になって。アツシ 殺気立ってたんですか。リョウコさん うんうん。 すごかった。 ここは、あれだけのエネルギーある町なんだよな、反対でも賛成でも。シャッチョ その婦人会は、町会の婦人会って感じだったんですか?リョウコさん その頃は町会の婦人会だけだね、あとPTAとかそういう関係の人で。 だって子供たち「あそこのと遊べばまね」とかさ。アツシ そっかそうですよね。リョウコさん 新しく嫁さんに来れば「あそこの人と口きけばまね」とかって、教えて。初めて来た人、なんでそうなるんだかわかんないっきゃな。 何年か暮らして「あーこのことかと思った」って言うんだもんな。 あの「あそこの人と口きけばまね」とかって。子供たちも「あそこのと遊べばまね」とか。 そういう状態が普通でないってことで。やっぱり…。 女の人たちが立ち上がったんだよの。
***
第8話「そういう人であったけど、やっぱりいないばダメだと思うんだよな。」に続きます。