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【Introduction】

「ナンニモシナイ」をめぐり、色々な人たちのもとを訪れて話を伺う、『失われたナンニモシナイを求めて。』というこの企画。2回目は、青森県弘前市石川にある「津軽あかつきの会」を訪れ、会長の工藤良子さんのお話を伺いました。

【目次】

まえがき(2023/8/14)
第1話(2023/8/15)
第2話(2023/8/16)
第3話(2023/8/17)
第4話(2023/8/18)
第5話(2023/8/19)
第6話(2023/8/20)
第7話(2023/8/21)
第8話(2023/8/22)
第9話(2023/8/23)
第10話(2023/8/24)
第11話(2023/8/25)
第12話(2023/8/26)
第13話(2023/8/27)
第14話(2023/8/28)
第15話(2023/8/29)
第16話(2023/8/30)
第17話(2023/8/31)
第18話(2023/9/1)
第19話(2023/9/2)
第20話(2023/9/3)
第21話(2023/9/4)
あとがき(2023/9/5)

2023年3月22日

【登場人物】

〈たずねた人たち〉
アツシ(高橋厚史)
シャッチョ(永井温子)
シオリちゃん

〈こたえてくれた人〉
リョウコさん
(津軽あかつきの会 工藤良子さん)

【第12話】

ずっと昔から続いてきた、生まれたり死んだり。

アツシ
 一つ聞いてみたいことあって。
 聞くのどうなのかなって迷っていたんですけど。
 僕、三十歳で。その、近しい人が亡くなるっていうか、死ぬっていう場面にこう、接してきて…。でも、自分のこととして死っていうものを考えることはなく、まだ他人事なところがあるんです、死に対して。
 良子さんポロっとおっしゃってる時あるんですけど、その、先が見えるとか。だから残して、残してっていうか、記録しておきたいっていうところが、あって。だからその、先が、自分の先が見えてるっていうか、そのなんていうんですかね。
 死ぬことであったり、死んでしまうこと。この世から、いなくなるっていうか、なんかそういう、そういうことについて、今どう考えているんだろうなってのを、聞いてみたかったんですよね。なかなかこう…。
 僕もあの祖母、祖母が、何年前かな。四、五年前ぐらいに亡くなったんですけど、 まぁ、そういう話ってなかなかできなくて。

 

リョウコさん
 えぇーその年でそのこと考えるなんてすごい!

 

アツシ
 あーいやそんなぜんぜん(笑)

 

リョウコさん
 私はもう、あの、寿命、その人持ってる寿命だと思ってる。
 今ちょっと調子いいけども、三、四年前はいつどうなってもおかしくないっていう状態が何回もあって。
 んで「あー、これで終わりなんだな」って思って。 あそこもまだ片付けてないあれも片付けてない。人は、 自分より年いったの身内にこれほどいるし、と思うけども。
 「あぁ、いいんだ」って。「自分のこれが寿命だと思えばいいんだ」って。「あとは、残った人がどうにでもしてくれる」と思って。
 んでこう、落ち着いたっていうのか、 あの、今もそうだけど、いつどうなってもこれが自分の寿命、決められた寿命だと思って。
 んでなんかこの頃やたらと元気になって。

 

一同
(笑)

 

リョウコさん
 この先もっと長いのかなと思って、それもまたちょっと困るなと思うけども(笑)
 まぁ与えられた寿命だから仕方ないと思って。
 思えるようになったの。

 

アツシ
 そっか、その、そこに至るまでは結構こう、じたばたじゃないすけど、なんか、落ち着かなかったんですね。

 

リョウコさん
 やっぱりこう、私がもしいなくなれば、娘にその私が、しょってるものをみんなこう行くとせば、娘もおっきな病気したことあって、あれだし、今は元気だけどの。先どうなるんだべと思って、ちょっとこうジタバタした時期もあったな。

 

アツシ
 うんうんうん。

 

リョウコさん
 これこうしようあれこうしようと思って、こう、ちょっと、遺言書書いてみたり、そういうこともしたけども。「あ、なんもいらないんだ」と思って、今は、いつどうなっても、それがあの決められた自分のあれだはんで仕方ないんだと思って。なんも今はぜんぜん、いらない。

 

アツシ
 遺言書とかも。

 

リョウコさん
 そこまではやっぱりね、あの、これで終わりなんだかと思えば、 ほとんど家も自分で管理してきたし。で、この人どうしようと思って、あそこさいる地蔵さま。

 

一同
(笑)

 

リョウコさん
 自分で何もしないで、いるのにさ。
 でも、いないばいないでこう、どうにかやってるから、どうにかね、死なないんだと思って。もう、開き直ったって言えばいいのか。そう思えるようになったら楽で、だからバラ色になったの。

 

アツシ
 自分がこう、いなくてもっていうか、関わらなくても、まあ、それなりに回ってくよねっていう、なんですかね。信頼みたいな感じなんですか?  仕方ないなっていう諦めみたいなものも、あったりするんですか?

 

リョウコさん
 諦めもあるし、信頼もあるんだけども、それが自然の流れだと思ってこう。
 ずっと昔から続いてきた、生まれたり死んだり。それを繰り返してやってきて、自分も当然その中の流れの中だから、 そのとき、寿命が尽きれば、それでもいいんだって。
 そうすれば、後の人はまた、その、どういう流れ方だかわかんないけども流れていくんだっていう、考え、だの。
 今だから不安もないし、そんなに、まぁどっか痛いとかそういうのは困るけど。

 

アツシ
 はい。

 

リョウコさん
 考えとしては不安はないな。
 ただの、あかつきが、誰かやってくれれば、一番気持ちがもっとこうのびのびするんだけども(笑)

 

一同
(笑)

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