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【Introduction】

「ナンニモシナイ」をめぐり、色々な人たちのもとを訪れて話を伺う、『失われたナンニモシナイを求めて。』というこの企画。2回目は、青森県弘前市石川にある「津軽あかつきの会」を訪れ、会長の工藤良子さんのお話を伺いました。

2023年5月4日

【登場人物】

〈たずねた人たち〉
アツシ(高橋厚史)
シャッチョ(永井温子)

〈こたえてくれた人〉
リョウコさん
(津軽あかつきの会 工藤良子さん)

【第16話】

だから村に入るっていうのは、時間かかって本当に。

アツシ
 訊かなくていいの?

 

シャッチョ
 あぁそっか、聞こうかなじゃあ。
 あのー、この前、石川地域の歴史の勉強会あって、すごい面白いなぁと思って。観桜会でも、あぁこういう感じなんだなって。
 で、すごいそこで気になったのが、石川は、南部藩の意識が強いじゃないですか、皆さん。なんかそういう中で、あの津軽あかつきの会って、津軽をつけた経緯というか理由というか、なんかあるのかなっていうのはすごい、最近気になってたんですけど、どうやって決まったんですか、名前って。

 

リョウコさん
 私が勝手にやったんです。

 

シャッチョ
 へぇー!

 

リョウコさん
 あの、もう本当のお友達仲良し会みたいな会だけど、 ひょっとしてこれ伸びていくんでないかな、別に伸びてほしいとも思わなかったんだけど、伸びていった時に、ただのあかつきの会。 まあ県外でも、中央に対しても、どこにもありそうな感じ。全国どこでもありそう。
 だから、 津軽をつければ、ここの特有の、ここは津軽地方って昔から、地名だから、 つければ、もし伸びていって全国区になって、なったときに、ここの、青森県の土地だっていうのわかるんでないかと思って。
 みんな「なにめんどくせぇその、長々しく津軽って、あかつきの会でいい!」ってばすごく反対されたんだけど、「まね!」って言って(笑)「津軽をつけないば青森県の宣伝さならない」って。そして、強引につけたんです。

 

シャッチョ
 なるほど。確かに津軽はもうずっと地名として古くからありますもんね。
 でもなんか、南部ってつけたい人も中にはいたのかなってちょっと一瞬思って、そんなことはなかったんですか?

 

リョウコさん
 南部、っていうのはやっぱり津軽に負けた、土地だから。
 歴史的なものもみんな抹殺されてしまって何も残ってないし、 そこの城、そこの公園だって、何年前だべね、整備されたの。荒れ放題の山であったんですよ、城跡で、私が子供の頃はそうだった。
 で、その後、ここの人も合併を機会にの、あの、直してもらわねばまねってこう、動いたみたいで、公園の形に、今の形になったけども…。

 

シャッチョ
 へぇ…。

 

リョウコさん
 本当にあの戦争に負けた国っていうのは、の。津軽の方のその正統性ばっかり歴史書でもなんでもみんな残って、南部の方のあれは全然もう、抹殺されてしまって。

 

シャッチョ
 そうなんだ…。
 この前の観桜会、新聞とかテレビでも取り上げられてましたね。

 

リョウコさん
 ね。そういうのに価値、価値があって、それはそれで村が活性化するなんていいけども、それが全部でないよね。

 

シャッチョ
 うーん。

 

リョウコさん
 だから村に入るっていうのは、時間かかって本当に。ただ急にこうしゃべってもな、なかなか、なに言ってるんだっていう昔からのこうあれ、しきたりがあるとこで。
 それが必ずしもいいことではないんだけど、それを破っていくだけの、自分の力がねば、潰されてしまうはんで、自分の力をまずつけて、あかつきも、今だはんでしゃべるにいいし。もう 四、五年前だっきゃ「なにしゃべってるんだ」っていう。
 ある程度、こう、実績っていうのか、そっちこっちでも取り上げられて、あ、こういう会なんだっていうのがあるから、言えるし。

 

シャッチョ
 弘前を代表するお店というか、団体に、なっているから。

 

リョウコさん
 あの、観桜会の会議でもさ、獅子舞とか、子供の踊りとか、どんでもいいのさ、本当は。あの人たち。

 

シャッチョ
 どうでもいい感じでしたねぇ打ち合わせの時(笑)

 

リョウコさん
 でもそれがないばなんも祭りじゃないっきゃ。ただ、テントの下で、お偉方が集まって飲んで、 それがあの、あれではないはんで。
 なんだかんだやっぱりこう、人が関心持ってさ、村の人がいろんな形で、参加して。それでだから出店の人、村の出店、こう頼んで参加するとか。折りっこさちょっと団子入れるの、村のお菓子屋さんさその部分頼むとか。今回は断られたけどの。でも声をかけることで、参加したことになると思う。

 

シャッチョ
 そうですね、次にも繋がると思いますし。

 

リョウコさん
 そういう形でやるのがお祭りだと思うんだけど…。

 

シャッチョ
 うんうん…。
 なんか、楽器の演奏ばっかり、すごい気にしてた、会議の時。なんでこんなに楽器の演奏にこだわって、それこそ、なんだろうな、石川音頭はまあ、相当ないがしろにされていたので。なんでかなって思ったらでもそういうことだったんだなぁ。あそこの屋根の下の人たちを満足させる、もてなすため、っていうのが強かったんだ。 町の人が参加するっていうことではなくて。

 

アツシ
 たしかに考えてみればステージの位置も不思議ですよね。
 町の人が、追いやられてる感じに、見えました。あの、上から見た時に。
 散歩したんですよねあの、公園を。公園の中を散歩してて、高台から見た時に、 うーんなんか、なんか、政治的な匂いがする、と思って(笑)
 もったいないですね、すごい。

 

リョウコさん
 うんうん。

 

アツシ
 なんですかね、 雰囲気は良かったんと思うんですよ。で、なんかすれ違う人とかも普通に楽しそうにしてて、 あのステージとあのやぐらの下がすごい異質、なんですよね。祭りの中でひとつだけ、浮いてる、浮いてましたね。

 

リョウコさん
 なかなかの、頭が変わるっていうことは、なかなかできない。
 でもな、 あの、あかつきが参加することで、こう、人が集まったっていうのは、もあるし、それは認めると思う。だから、 ちょこちょことこう、皮肉を交えて話していって、いろんな形で。ちょっとずつでも変わってほしいの。

 

シャッチョ
 石川音頭に関しては、なんか、小学校の教頭先生が来て「今度教えてほしい」みたいに言ってたって。

 

リョウコさん
 んだっきゃの、言ってたの。

 

シャッチョ
 そういう風に繋がったのがすごい良かったなと思って。

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