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【Introduction】

「ナンニモシナイ」をめぐり、色々な人たちのもとを訪れて話を伺う、『失われたナンニモシナイを求めて。』というこの企画。2回目は、青森県弘前市石川にある「津軽あかつきの会」を訪れ、会長の工藤良子さんのお話を伺いました。

2023年5月4日

【登場人物】

〈たずねた人たち〉
アツシ(高橋厚史)
シャッチョ(永井温子)

〈こたえてくれた人〉
リョウコさん
(津軽あかつきの会 工藤良子さん)

【第17話】

そうすごい私だばそういうのに感動するんだよの。

リョウコさん
 あの、うちの娘のグループがここに集まってるんだけど、一人孫連れてきて。 あの、その孫がその、獅子やってる間、その獅子の拍子に合わせてこう、足を、そのまんまこうやって拍子とってたんだって。

 

一同
 へぇー!

 

リョウコさん
 んで、みんな周りが「あれ風船買ってけるか何買ってけるか?」って言ってももう、見もしないで。

 

アツシ
 獅子舞の拍子をとるのに夢中で…。

 

リョウコさん
 だから、それがあの、伝承だと思うんだよな、その、そういう、こう、地域のそういう音とかそういうのに慣れて…。あの、自然にだれも教えなくても足でこう拍子とってやるっていうのが、やっぱり楽しいはんでやるんだっきゃ。それが成長すれば、あの、その、ずっと繋がっていってくれると思って、あぁそれ、それこそやったかいがあるってさ、喜んでらんだけど。

 

アツシ
 うんうんうん。

 

リョウコさん
 誰もそういうこと考えないでしょ? そういう、地味な。うちの会の人たちだって、そういう小さい子供が獅子の拍子とったって、なんていうこともない。弁当の反応がどうだかとか、そっちの方さもう、いってるし。

 

アツシ
 僕もあの、地元の、岩手の、実家の地区で、 小学生ぐらいの間ずっと獅子舞やってたんですよ。知り合いの方が保存会やってて、両親に「それに行ってこい」って言われて、「若いの探してるから」って。こう、何もわからないまま、夜、練習とかしてたんですけど、やっぱすごい体に残りますよね。

 

リョウコさん
 うんうん。

 

アツシ
 その、獅子舞のリズムとか、その独特の動きとかって、 なんかすごい、今考えると癖になる、頭に、体に残るいいリズム、ですね。
 だからその、ちっちゃな子が、足で拍子をとってるっているのは、やっぱすごい大事な、瞬間だったと思います。 その子の気持ちになることはできないですけど、でも、その獅子舞を見ながら、体が自然に動いてしまったっていうその子の、状態ってとても喜ばしいことですよね。

 

リョウコさん
 そうすごい私だばそういうのに感動するんだよの。
 んでそして、小さいときちょっとやってれば、 自分のこう、ふるさと、まだ若いから感じないかわかんないけど、これから自分のふるさととか考える時に、そういう体験っていうのが大きくないですか?

 

アツシ
 大きいですね。

 

リョウコさん
 ここはなんにもないから、例えばここの子供たちが、成長して都会に行って、帰ってきたいっても、なんもないっていうよりも、なんかこう体に残ってるところがやっぱり懐かしいと思うんだよね。
 そういうのを作りたいと思って。

 

アツシ
 でも、そうですよね、さっきあの歴史が抹消されたって、おっしゃってたじゃないですか。その南部の流れからの、そういう歴史が、抑え込まれてきたっていうとこで一回、なんかその繋げていくものが途絶えたりとか、っていうのはありそうですよね。たぶんあの、日本が戦争に負けてっていう、やっぱその構図というか形と同じだと思ったりもして。
 石川でもしかしたら起こっていたかもしれないことって、津軽に負けたあと、本当に何百年も、前の話ではあるんですけど、ずっとこう、その歴史…。

 

リョウコさん
 んなんだよの。それでもまだ、あの「ここは南部だはんで」って。その気持ち、すごい、もうね、みんな。もうここに残ってる時代でないんだけども。あの…。ここは、ねぷた出さない地域なんです。ねぷたは津軽のものだからって。
 んで花車って、京都のあの祇園祭りとはまた全然規模が違うんだけど、台の上に、人が人形の格好して乗って、 花いっぱい飾って、それをあの引っ張って。で、それが毎年やってあったんだけど、今もうな、後継者がいなくてもうできなくなって、辞めてから、辞めてから十年ぐらいになるんじゃないかしら。それまでは毎年やってらったの。

 

シャッチョ
 何月くらいにやってたんですか?

 

リョウコさん
 お盆です。二十日、二十日盆って。二十日盆にそれやって、んで送り盆に仮装盆踊りって、みんな、この辺の人たちが仮装して集まって盆踊り踊って、それが石川の名物だったんです。それも、なくなっちゃったけど。
 花車は、今はその国道はああいうのを引っ張って歩ける時代でないべはんで、その仮装盆踊りを再現したいと思って、密かに頭の中で、できるんじゃないかと思って、この前の…。

 

シャッチョ
 うんうん、来ると思うんですよね。この前みたいに仮装してきた人に特典を、みたいな感じで。

 

アツシ
 あーそうですよね。

 

リョウコさん
 着物着て集まる人もあるんだし。

 

シャッチョ
 何かこう、普段とは違うものを着てきたら、こういういいことがあるよってやったらできそう、だけどな。

 

リョウコさん
 昔はあの、町会ごとにこう仮装の題を決めて、今年は、ハワイアンだとか。

 

シャッチョ
 えー! 楽しい!

 

リョウコさん
 花笠だとか、そういう題を決めて、その格好してみんな出て、そして、 一等、二等決めて。
 だから、石川の人だけでなく、大鰐でも平川でも、どっからでもこう、別の町会も、町会ごとにこう旗立てて、どこどこ町会って書いた旗立てた人を先頭に、集まってきて。

 

シャッチョ
 すごい!

 

リョウコさん 
 そうして、やったんだけども。凄い人数でな。学校の校庭でもう、盆踊りの輪が二重だったのが、ちょっとすれば三重にもなったりしてやったんだけど。
 そこまでいかなくても、その、仮装して、まとまった仮装でねくても、一人ずつ買って、どうでもいいから。ただね、石川音頭だけでもまねはんでやっぱり、ドダレバチでもいいし、今の若い人のなん、なんだかっていうそういう踊りでも自由だと思うんです。高校生とかもいいなと思って。そういう踊りの町になってくれれば、 子供たちにこう残るんじゃないかなと思って。
 まぁ、自分の体力考えれば、どこまで行けるかわかんないけど、町会が乗ってくれればな。

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